受動輸送とは対照的に、能動輸送は、濃度勾配や電気化学的勾配に逆らって膜を通過する物質に生じます。能動輸送には、一次能動輸送と二次能動輸送の2種類があります。一次能動輸送は、細胞膜に埋め込まれたタンパク質のポンプを動かすためにATPの化学エネルギーを利用します。ATPからのエネルギーで、ポンプは電気化学的勾配に逆らって、通常イオンが拡散により移動しない方向に向けて、イオンを輸送します。
能動輸送の動態を理解するには、まず電気的勾配と濃度勾配を理解することが重要です。濃度勾配とは、膜や空間における物質の濃度差のことであり、高濃度の領域から低濃度の領域への移動を促します。同様に、電気的勾配とは、膜の両側の電気化学的な電位差から生じる力であり、膜の両側で電荷が同じになるまで、膜を越えたイオンの移動をもたらします。電気化学的勾配は、化学的濃度勾配と電気的電荷勾配の力が組み合わさって生じます。
細胞の電気化学的勾配を維持するために重要なトランスポーターの一つがナトリウム-カリウムポンプです。ポンプの一次能動輸送は、ポンプが細胞外側を閉じ、細胞内側を開いてATP分子と結合させた状態で膜をまたいでいる時に起こります。この構造では、通常細胞内に低濃度で存在するナトリウムイオンに対してトランスポーターが高い親和性を持ち、3つのナトリウムイオンがポンプへ入り込んでくっつきます。このような結合が、ATPのリン酸基の1つをトランスポーターへ移動させ、ポンプの細胞内側を閉じ、細胞外側を開くのに必要なエネルギーを供給します。
この構造変化により、細胞外へ放出されるナトリウムイオンに対するポンプの親和性が低下する一方、カリウムに対する親和性が高まり、細胞外に低濃度で存在する2つのカリウムイオンと結合できるようになります。すると、細胞外側のポンプが閉じ、トランスポーターのATP由来のリン酸基が外れます。これにより、新たなATP分子がポンプの細胞内側に結合できるようになり、ポンプが開いてカリウムイオンが細胞内へ排出され、トランスポーターは元の形へと戻り、再びサイクルが始まります。
ポンプの一次能動輸送活性により、膜間のイオンの分布は不均衡に行き着きます。細胞内ではカリウムイオンが多く、細胞外ではナトリウムイオンが多くなるのです。そのため、細胞の内側は外側よりも負に帯電します。このイオンの不均衡の結果、電気化学的な勾配が生まれます。この電気化学的勾配の力が、次に二次能動輸送反応を動かします。二次能動輸送は共輸送とも呼ばれ、一次能動輸送によって形成された電気化学的勾配の結果、ATPなしに物質が膜を通過して輸送されることを指します。
章から 5:
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