実験サンプル、標本、試薬の超低温保存法は、生物医学研究で日常的に利用されています。このビデオでは、サンプルを冷却して保存する方法や各実験に適した冷却方法を紹介しています。例えば、実験中にサンプルを冷えた状態で維持するために用いる氷やドライアイスなどの冷却剤について、そしてそれら冷却剤の物理的性質や取り扱う際の安全措置について解説しています。研究専用の冷蔵庫や冷凍庫などの冷却装置を利用することで、サンプルの長期保存が可能となります。ビデオでは、それら冷却装置で保存可能なサンプルや試薬の種類についても解説しています。凍結保存法とは、組織、細胞、生体分子を氷点下まで冷却して保存する手法であり、サンプルを劣化に導く全ての生物活性を停止させることができます。サンプルに損傷を与える氷晶の形成を最低限にとどめ、適切に凍結保存するための手法をいくつか紹介しています。
実験サンプル、標本、試薬の保存は世界中どこの研究室でもとても重要視されます。サンプルの完全性と生存能を維持したまま保存する効率的な方法は、冷えた状態に保つことです。
サンプルを使用するときと保存するときとでは、異なる冷却法が適用されます。このビデオでは、研究で一般的に用いられる冷却剤や装置を紹介していきます。サンプルの種類に応じた保存条件を学んでいきましょう。
実験の種類に応じて、冷却剤を選択する必要があります。
通常サンプルを短時間保存する際には氷を利用します。氷は凍結水なので、この状態図を見て分かるように、標準気圧での融点は0℃になります。あまり知られてはいませんが、室温で温められて氷が液体となり「ウェットアイス」と呼ばれる状態になります。
ウェットアイスはサンプルや試薬を冷えたまま使用、また移動させるのに適しています。
「ウェットアイス」が固体のH2Oであるのに対し、「ドライアイス」は二酸化炭素を固体にしたもので、融点は-78.5℃です。ドライアイスは、標準気圧では液体にならず、昇華して直接炭酸ガスになります。昇華とは、固体が直接気体となる相転移であり、状態図の三重点以下で起こります。
ドライアイスは、凍結したバクテリア、又は哺乳類の細胞や組織などの生物サンプルを取り扱う際に適しています。通常、生物サンプルは0℃よりもはるかに低い温度で保存します。
また、ドライアイスは昇華してなくなるので、液体を注ぐことで最適な冷却環境を作ることが出来ます。
液体窒素は窒素ガスを濃縮したもので、通常LN2と表記されます。標準気圧での液体窒素は、この状態図で分かるように、-196℃で液体から気体に変化します。
研究室にある冷凍庫の設定温度よりも低い温度で、生物サンプルを保存したいときに、液体窒素が活躍します。
液体窒素は、ゆるい蓋付きのデュワー瓶あるいは真空フラスコ又は、圧力が高くなるのを防ぐ安全バルブが備わったデュワータンクに充填します。
ドライアイスや液体窒素は毒性はありませんが危険物なので、経験者から訓練を受けるまでは使用しないようにしましょう。
また、非常に低温なので、肌に触れると深刻な組織の損傷を招く危険性があります。グローブやラボコートの着用など常に適切な安全措置を講じて下さい。サンプルの取り扱いには器具を使用し、皮膚への接触を避けましょう。
ドライアイスや液体窒素は気体に変化するため、絶対に密閉容器は使用しないで下さい。密閉容器に入れると、圧力が高くなり爆発する恐れがあります。
次は、サンプルを冷却するための装置を見ていきましょう。研究室の冷蔵庫や冷凍庫は家庭のものよりも温度を細かく設定でき、内部の温度を均一に保つことができます。
通常、温度モニタリングシステムやアラームが備わっており、著しい温度変化に対応できるようになっています。
決して食べ物や飲み物を研究室の冷蔵庫及び冷凍庫に入れないで下さい。有毒な化学物質やバクテリアが混入する恐れがあります。
冷蔵庫は4℃に設定し、サンプルの一時的な保存、特に凍結することでサンプルに影響を与えてしまう場合に使用します。
細胞培養液などを含む多くの試薬や溶液は長期保存のために4℃で保存し、使用直前に温めます。
コールドルームは、低温で操作すべき大きな実験装置、例えば液体クロマトグラフ装置などを設置するのに理想的な場所です。
研究室では、-20℃から-196℃の冷凍庫が使い分けられています。
核酸や制限酵素などの試薬は-20℃での保存が推奨されます。冷凍庫から取り出した後は氷の上で保存します。
-80℃の極低温(きょくていおん)の冷凍庫は、液体窒素で凍結した組織や細胞を保存するために使用されます。-80℃の冷凍庫から取り出したサンプルを扱うときにはドライアイスを利用します。
凍結保存は、組織や生細胞の長期保存に適しています。氷点下では、サンプルの劣化を含むすべての生物活性が効果的に停止します。
生細胞や組織を冷凍すると氷晶の形成により、細胞が脱水し損傷することや、溶質分子が濃縮され有害な濃度に達することがあります。
急速冷凍法では、液体窒素又はドライアイスとエタノールの混合物を使って温度を急激に下げるため、大きな氷晶が形成されず、細胞がダメージを受けにくくなります。また、凍結保護物質を使うと氷晶の形成を防止できます。
急速冷凍に代わる手段として、冷凍過程を制御できる機械を使用する方法があります。この手法はヒツジの胚の凍結保存に不可欠です。
近年では、 氷晶によるダメージを与えずに細胞や組織を凍結保存する手法としてガラス化法が利用されています。凍結保護物質の存在下、急速に冷やすことで、サンプル中の液体を非晶質のガラス状固体に変化させることができます。
ここまで、実験サンプル及び試薬の冷却方法についてご覧いただきました。このビデオでは、様々な冷却剤や装置、各冷却方法の適用例、また生物サンプルの凍結保存法を紹介しました。ご覧いただきありがとうございました。
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